懐中のトッケイ

わたしはここでかわいていく

随筆

marshmallow justice

お前は本当は双子であったのだ。 それを知らされた時のわたしの顔といったらない。 小さいころ、無暗に体が強かったわたしは冬でも半袖で走り回るような子供だった。 他の家族は全くそんなことはないのに、自分だけなぜか平気な顔をして鳥肌も立てずに冬空の…

約束は赤い窓辺で

一通を待つのがつらい人がいる。 一通が来るのもつらい人がいる。 里帰りの季節だ。 学生は言わずもがな、社会人はお盆に連休を合わせて、地元へ帰って家族と過ごす人が多かろう。それに伴う墓参りやら親戚回り、それだけならいいものの、やれ子供だ結婚だと…

モノノケダンス

自分は正常だなんて思い始めたときから、人は狂い始めるのだ。 動物というのはいいものだ。なにせよく動く。 動物というのはいいものだ。ともすればかわいい。 しかし我々はどうもこの動物という存在を指す時に、我々を抜いて考えてしまっていることが多い。…

絶望という名の地下鉄

この箱は、わたしをいったい、どこへ連れて行こうというのだろうか。 ドアが閉まり、わたしの風景の一切は闇に掠め取られた。 これは都会と田舎をひとたび行き来したことのある人ならわかることだが、電車というのはよいものである。自分で運転しなくても、…

鉄風 鋭くなって

鍛えよ。 鍛えねばならない。そうした観念がわたしには数多くある。 頭を鍛えよ。わたしにはまだ知らないものが山とある。何を知らないのかもまだ知ることができていない。 目を鍛えよ。わたしは何を見るか。何が見えているか。見たいように見るだけでは、あ…

Ink or Sink

ピータンを知っているだろうか。漢字では「皮蛋」と書く。 これは中国料理の前菜のひとつで、「蛋」という字は蛋白質の蛋、つまり卵という意味がある。ピータンとは卵料理のひとつである。 しかしあれを料理、と言っていいのかどうかは、いまひとつ疑問の残…

at the BLACK HOLE

穴がある。 目の前に大きな穴がある。 困ったことに人間は、それを気にせずにはいられない生き物だ。 思えば小惑星がどっかんどっかん衝突してできあがったらしい地球という惑星に住んでいる以上、その誕生の舞台そのものが穴だらけで生まれてきたのだから、…