懐中のトッケイ

わたしはここでかわいていく

ピクシーかよこ

   ピクシーかよこ

 

 かよこは妖精である

 四頭身ぐらいの頭でっかちで

 大きなつば広の帽子をかぶっている

 べつに羽が生えているわけではないのだけれど

 彼女が通ったあとは きらきらとまぶしい

 うすい空色のふっくらしたワンピースの内側から

 あれは 鱗粉がこぼれおちているのだ

 

 勝ち気に大きく開かれた 澄んだ泉のような目の上に

 それはそびえる大山塊のごとく ふとくりりしいまゆがあり

 つぼまった袖から ぴょこ とでている小さな手は

 ひらいたり また にぎったりして

 この世の空気のかたさを確かめているのだ

 

 かよこはわたしの机の上を縦横無尽に走り回った

 いずれ帰るところがあるのだろうとも思ったが

 それも彼女が言い出すまでは まあいいのだろう

 あちこちをきんきらきんにしてしまって

 そのうえに小さなあしあとがたくさんついていった

 拾ったらしいパステルのダブルクリップを肩にかけて

 なんだかごきげんな様子でステップを踏む

 

 もういくね とかよこは言う

 なにかお土産にあげようと思ったのだけれど

 かよこはもう みみかき棒のわたげにほおずりしていたので

 わたしは笑ってしまって ふいに目を細めたらもう

 かよこはいなくなっていた

 

 その夜わたしはまたひとつ笑うはめになった

 いったい いつのまにやったのか

 万年筆のインクが かよこの鱗粉でいっぱいである

 あのふとまゆめ

 しかたがないのでわたしは

 鱗粉まみれの文字で かよこのお話を書くことにした 

 

 

 

 

 

下:かよこ近影

f:id:canduuky:20160627145225j:plain