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懐中のトッケイ

わたしはここでかわいていく

飴町ゆゆき自選50首

短歌

2月に短歌を始めて半年が経った。

うたの日で題詠歌会に参加すること3ヶ月余り。6月からはTwitterでフォロワーから題を募っての作歌が多くなった。その間も月1回、名古屋で常時10数名規模の歌会(大辻隆弘氏主宰:オアシス歌話会)に参加させてもらうなど。

そうこうしているうちに、詠んだ数は200首を越えていた。賞に応募した未公開を含めるともう少し多い。

なんだかよそ様からお題を与えられないと筆の重い気質であるらしく、そのほとんどが題詠である。とはいえまあそこそこ貯まったので、ここらでひとつ自作を整理しておきたいと思い、比較的気に入っている歌をてきとうに選ぶことにした。やっぱり応募用に本腰入れて作ったものは気合も入っていていいのだけれど、こちらはもう少し未公開にさせてほしい。まあ、落ちたことがわかればまたどこかで読んでもらう機会もあろう。そのときはよろしくたのむ。

 

そんなわけで、飴町ゆゆき自選50首。

口語のうたも文語のうたもごちゃまぜなので、読みにくかったらすまない。

ひとつでも、読者諸氏のお気に召すものがあれば幸いだ。

 

 

 

1大きなる手にひかれたる我が目にはジャスコはぴかぴかにひかつていた

 

2眉根寄せちちんぷいぷい唱へてはボタンもしめで飛び出せる朝

 

3チルド室見つつ母聞く「ハンバーグがいいと思うひと」ハイ! ハイ! ハイ!

 

4ざざぶりの大喝采に飛び込んで誰にもさえぎられないわたし

 

5なにとなく指に差したる頃思ひちくわれんこん箸をはこべり

 

6エウーレカ、ハートは胸にあらざりき 唯物論に今朝触れし君

 

7あまりにも白きにすぎるカレンダー目の付きし日に色塗れば春

 

8道端の空箱を指し「マルボロ」と見よがしに笑む女子高生あり

 

9愛してる殺してやるの真っ赤な恋うすめてカワイイなどと乙女は

 

10ほどかるるためのかたちをきつく締むまだなんぴとも触れぬ胸もと

 

11たてじまのシャツにカーキのカーディガン古典教師の私生活見ゆ

 

12もうこれで逃がさないよと仮縫いのわたしをすっと引き抜いてみる

 

13二の丸へ攻め込まれたる心地してやにわに胸にかける閂

 

14発砲を許可願います 対象はパーソナルスペースに停滞中

 

15目に痛き色とりどりが開かれてそっと安傘をさす放課後

 

16まだ君と同じ高さの目と声で笑ってられた三月があった

 

17何パーと数えるほどの恋だった季節は流れていくはずだった

 

18あげたのが誰かはきけずそっと抱くあなたの第二第二ボタンよ

 

19ブラックラブホールにふいに転げ落ちゆきて帰らぬわたしが見たい

 

20たったひとつこれだけなんてものはない忙しいのはいけないことか

 

21黒々と大きなるかなスピーカー有象無象を蹴散らして鳴け

 

22たましいの半熟たまごの作り方480秒間踊る

 

23おさかなを上手に食べるひとに弱い。さばけるひとにはめっぽう弱い。

 

24見解の相違、国交一時やめ。「目玉焼きにはソースよ」「塩よ」

 

25重苦しい夜も「うなぎ」の一言でお開きとなる我が家に幸あれ

 

26わたしとの約束ふいにするほどの男ができたとみていいんだね

 

27風船のような恋だった。舞い上がってはち切れて、何も残らなかった。

 

28おそろいのマグに罪無きくじらの絵むこうでも君泳げカフェオレ

 

29思ひ出がキャタピラ鳴らし迫り来て地雷ヶ原を一心に駆く

 

30化石したわたしが発見されました防御姿勢でひきだしの奥

 

31まど・みちおのくまになりたい 春が来て自分が自分じゃないよな不安

 

32チョコにする、やっぱりベリーも捨てがたい、メロンもいいし、ぜんぶください。

 

33野良三毛を息せき切つて見送れりうぬはいつしも猫曜日かよ

 

34せめてもの抵抗 わたしは肉球を持たざるゆえに爪をみがいて

 

35手を握る 次殴られたら出ていくと言ったあなたがまだここにいて

 

36あれもこれもと背負つてつぶれて泣いてゐるわたしはそんなに強くなかつた

 

37名のあとの@できっと濁るもの漂白せよ漂泊せよわたし

 

38ガタと鳴り掠め取られし風景よ音だけ置いてきやがって特急

 

39衛星のドライブインには星屑という名のこんぺいとうが売られて

 

40わたくしの中の朝日に出会うため三つ四つ含む甘き明星

 

41ここですと星がきちんと落ちるようカラにしておく黄銅の鉢

 

42けたたましき遊説つづく七日間じじじわわわわこと切れる蝉

 

43ポケットをやましからずもまさぐりて鳥居のごとく探知機を過ぐ

 

44他の花を殺め紺碧なほ盛ん雁首ならべをる鳥兜

 

45くさをはみくさをはみしてあの硬き、鋭き角を持てるインパラ

 

46一陣のジャムセッションが鳴りわたり紅の野はブビンガブビンガ

 

47バベルから離れ互いに花束を贈る月夜のトライリンガル

 

48なにそれと言われちゃってもわたしにはこれがいちばん、いちばんだもの

 

49星を見ることを覚えて日は過ぎて肩抱くひともなくて砂浜

 

50ポロックのごとく硫黄の乳を噴き島はさみどりに浮かんでゐた

 

 

 

 

 

 

 

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20160811 鹿児島県三島村・薩摩硫黄島